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全社的リスクマネジメント
週刊東洋経済 迎春合併号
2006年12月30日-2007年1月6日 特大号
特集 / 「2007年全解明」より
地政学リスクは連鎖し想像上回る損害に 「パーフェクトストーム」への対応不可欠
企業経営における最も重要な要素は、リスクに適切に対応していくことだ。それを怠れば、たとえ優良企業といえども崩壊の危機に瀕してしまう。昨今のグローバル化の波によってあらゆる変革の速度が増し、それにより多種多様のリスクが存在する環境になってきていることは周知の事実だ。
具体的にはテロ、訴訟、環境問題、パンデミック(伝染病)や自然災害などのリスク、そしてグローバルな事業展開に影響を及ぼすような規制関連の諸問題に対応するため、企業は危機対応に加え、実際に危機に直面した際の事業継続能力の向上が求められている。個々の有事対応だけに注力するのではなく、エンタープライズ・リスクマネジメント(全社的なリスクマネジメント)の効果を活用し、優先順位の決定、事業拡大、人員配置、効率性の追求に焦点を当てるべきだ。
ニューヨーク証券取引所が実施した調査によると、多国籍企業のCEOの多くは、「かつてないほど世界経済は競争が激化しており、巨大リスクが多く潜在している」と認識しているという。巨大なリスクとして、燃料急騰、医療費の高騰、年金および退職金プランの費用拡大、投資の不確実性、政治リスク、価格変動、世界経済の変化などを挙げている。
当社の調査によれば、米国ではテロや気候変動に関連した巨大災害からの復旧、復興に大きな関心が寄せられている。伝統ある企業ほど、年金と医療費にかかる費用こそ、最大限緊急を要すリスクであるとしている。企業は新規事業への取り組み、新規市場への参入、情報化や効率性重視などによる経済成長の一翼を担うかたわら、新しいリスクの発生と既存増大という危機に直面している。
企業が最も注目すべきリスクは気候変動
たとえば、フランスの労働者ストライキ、中東におけるテロ、英国の年金法制定、インドの宗教紛争、米国における通貨変動などが盛んに報道されている。これらの事象は企業におけるサプライチェーンの阻害、操業資金の積み増し、投資計画の修正などを招くのは言うまでもなく、さらには顧客満足度の低下や、ビジネスモデルの抜本的な改革を求められることにもなりかねない。
個々のリスクは連鎖し、国や地域を越えて広がるリスクと相互作用し、単一のリスク事象から想像を上回る損害を被りかねない。世界に広がるほど危惧されるリスクシナリオは、単一のリスクこそ起点になるものの、それが引き金となり他のリスクに波及して生まれるリスク連鎖であり、それは破滅的な「パーフェクトストーム」となりうる。個々のリスクが相互に作用しながら拡張していくのだ。企業はこれらのリスク連鎖に瞬時に対応すべきであり、一時の遅れも許されない。
保険に転嫁が可能なリスクを洗い出し、クレームを処理していくという旧来型のリスクマネジメント手法ではなく、企業は直面するリスクを適切に理解し、業績を最大限に伸ばし、競争社会に打ち勝つ優位性をもたらすような手法を取るべきだろう。有事の即時事業復旧や積極的なリスク防止策を適切に作用させることが大切だ。
当社は世界的な巨大リスクの特定、それらが世界経済に与えるインパクトの測定と低減策の策定に関するプロジェクト「グローバル・リスク・プロジェクト」を遂行している。これはワールド・エコノミック・フォーラムのプロジェクトの一つで、10年後の世界的なリスク兆候にも言及している。
具体的には、原油価格急騰やテロリストによる紛争など、短期間に発生するリスクやインフルエンザの伝染、長期的展望で見れば気候変動の影響により生じる潜在的なリスクなどが、例に挙げられていている。
この中で、企業が最も着目すべきは、気候変動に伴うリスク。巨大災害が頻発し、それが物理的なインパクトに連鎖し、エネルギー貯蓄、交通機関、送電線などの物的損傷に発展し、事業中断の危機を引き起こす。従業員や顧客の健康にかかわるインパクト、事業資源の損失など、気候変動に伴うリスクは重大なのである。
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マーシュ・アンド・マクレナン・カンパニーズ
社長兼CFO
マイケル・G・チャカスキー
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