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Risk Alert
鳥インフルエンザ:パンデミックに備えて


はじめに

 過去何年にもわたって、各国の政府、保健機関、報道機関は高病原性鳥インフルエンザ (以下、鳥インフルエンザという)の潜在的危険性について警告を発してきました。今年 7月の時点で、全世界では230名が感染し132名の人が亡くなっていますが、これは予 想よりもかなり高い死亡率になっています。(WHO感染確定症例数 2006/7/18)。この 状況を踏まえて、世界主要国のリーダー達が“パンデミック(pandemic:世界的流行およ び非常に多くの数の感染者や患者を発生する流行)”について語り始め、多くの企業が自社の事業継続計画の見直しを始めています。
 人間の死亡については、10カ国で報告されていますが、これまでのところは感染した 鳥の接触から感染するケースがほとんどで、ヒトからとヒトに感染したケースはほとんどありませんでした。しかしながら、ウイルスがヒト同士の感染を可能にするように変異していくことについては世界保健機関(WHO)のWHO局長のリー・ジョンーウク氏は「鳥 インフルエンザ-おそらく H5N1型がヒト同士の感染を可能とする能力を身につけ、人 間のインフルエンザが世界的に流行することは時間の問題である。いつ起こるかは分から ないが、起こることについては確信がある。」と、述べています。
 企業としては、現時点からインフルエンザのパンデミックに備えた十分な準備をしてお くことが非常に重要になってきています。


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企業の対応と事業継続について

 多くの企業、とりわけ大手の多国籍企業では既に戦略企画、業務、人事、保健管理の 部署が一体となって鳥インフルエンザのパンデミックに対応するプランニング委員会 を設立しています。また鶏肉を使用している食品業界の一部では、鳥インフルエンザ のパンデミックが起きた場合に、自社製品に対する不安を静めるようなキャンペーン をうつことによって自社ブランドを防御する準備を進めているケースもあるようです。 しかしながらいまだに多くの企業が特別な備えをせずに、万一パンデミックが発生し ても自分たちは影響を受けない、もしくは必要に応じて対応することで十分であると 考えていることも事実です。
 企業としては鳥インフルエンザの脅威を想定して現行の事業継続計画の見直し、改訂 をする必要があります。理論的には、事業継続マネージメントにおいては潜在的に業 務中断を引き起こすあらゆる可能性が洗い出されており、それに対応した復旧手段が 考えられているはずですが、鳥インフルエンザについては通常のビジネスリスクとは 異なる次のような特性を考慮すべきです。

  • 文化、業界、地理的境界に関わらず世界的に影響を及ぼす
  • 素早くまん延し、何か月に亘って継続する
  • 公衆衛生の専門家によれば世界の人口の25%以上が感染すると予想されている
  • 医療機関、公衆衛生部署およびそれらの下部機関に過大な負担を強いる
  • 地域経済、グローバル経済といったマクロレベルで影響が発生することによって 企業の業務遂行方法、事業継続能力に大きな変化を強いることになる
 インフルエンザの発生前、発生時、拡大時に企業が準備を進めておく上で考慮すべき 多くの問題点があります。次に述べるチェックポイントは完璧なものではありません が、その為の準備を進める上での一助となれば幸いです。

(1)発生前
  • 鳥インフルエンザの特徴および会社業務、従業員、顧客、財務に直接または間接 的に影響を与える潜在的な要因の理解。
  • 既存の緊急対応計画、マニュアルおよび事業継続計画、リスクマネージメント、 人事、コミュニケーション、重要なサプライヤーおよび業者等に関する対策、お よび売り上げに関わる影響についての検討。例えば、「このプランは従業員が減少 した場合または重要な従業員が亡くなった場合に有効か。 別の地域から従業員 を確保できるか。 感染または感染の恐れが売り上げにどう影響するか。 会社 としてどういう対応をすることによって危機的状況を打開できるのか。」等。
  • 政府、国際機関、業界団体から提供される会社と従業員にとって有意義なガイダ ンスの入手。
  • 従業員が鳥インフルエンザに感染したと判明した場合の、対処および報告ルート の明示。事業継続計画の引き金およびリスクの主要指標についての社内コンセン スの確保。
  • サプライチェーンの再検討、業務の継続について鳥インフルエンザによって付加 されるリスクの評価。例えば外国、とりわけ既に感染した国のサプライヤーを使 うリスク等。
  • 従業員に感染するリスクを最小化するための衛生管理マニュアルの作成または見 直し。
  • 定期的なニュースレターによって、従業員に病気の知識と家庭、職場での予防策 についての周知徹底。
  • 業務継続計画の定期的テスト。計画の有効性を試すためのいろいろな発生シナリ オを考慮したリハーサルの実行。
  • 上級管理職が非常事態を管理できるスキルを持っていることの確認。

(2)発生時

 感染拡大時に企業がいち早く問題点を認識し、有効に対応することが従業員の安全、 利益の確保、評価の維持、最終的にはその企業のサバイバルに大きな影響を与えます。

 企業として感染拡大の危機を4〜6のフェーズ別に分類した事前対策計画を作成する ことが重要です。それぞれの段階において事前に警告情報を流すことによって、個々 の施設や地区単位で事態を把捉し、適切に対応できるような対策を設定します。各フ ェーズでは以下のポイントについて適切なガイダンスを与えるようにします。

  • 従業員の配置/割り当て
  • 保健、安全管理問題および手続き
  • 業務対応
  • 人事/福利厚生
  • 内部・外部とのコミュニケーション
  • 財務資源の分配およびインパクト分析
  • 政府の関与
  • 製品、施設、情報技術 および知的財産の安全対策

また、現状の事前対策計画を見直し、次のポイントにどのような対策がとられている か再検討してみてください。

1.情報とコミュニケーション
  • 鳥インフルエンザの特徴、感染経路、症状、予防策
  • 従業員が感染もしくは感染したと思われる場合の対応策、伝達ルートの周知徹底
  • 従業員が来社不能の場合の対応策
  • 潜在的リスクについてどの段階で上位の管理職に伝達するかについての周知徹底
  • 従業員や顧客に対しての潜在的な危険性についての伝達時期と方法
  • サプライヤー、顧客、従業員とのコミュニケーションを保つためのコールセンタ ーの設置

2.人事/福利厚生
  • 在宅勤務の許可について
  • 感染した従業員が出社した場合の取り扱い
  • 外国人従業員が一時的に他の地域に異動を希望した場合の取り扱い
  • 従業員の家族の死亡に関わる企業のサポートについて

3.業務について
  • 従業員が25%以上来社しない状況下での業務上の支障の可能性
  • 在宅勤務の可能性。在宅勤務に移行するためのインフラのサポート
  • 仕入れ品が汚染されていないという確認をする根拠
  • 商品が汚染されていないと公表する根拠
  • サプライチェーンの中断の可能性
  • 施設およびヒーター、清浄、空気調節システム、電気製品、および毛布、カーテ ン等の浄化方法
  • 従業員が安心して働けるための確証
  • 従業員の特定地域への出張の禁止措置の発効時期、出張中の従業員が発病した場 合の自宅までの移送措置
  • 事態が悪化した場合に追加支援を受ける方法
  • 緊急対処要員を含むトレーニングを受けたクライシスマネージメントチームの組 成。チームメンバーの任務についての理解

4.リスクコミュニケーション
  • 経営陣の適切なメッセージを出す準備
  • 状況に応じたプレスリリースの準備
  • 内部および外部のコミュニケーションを管理する組織の設置
  • 現状のコミュニケーション手段が中断された場合の対応策
  • メディア、その他の利害関係者に対応する訓練されたスポークスマンの配置


(3)パンデミック拡大時

  • 業務復旧チームの効果的な運営、チームの活動に必要な支援者のサポート、チー ムおよびその支援者が現場に常駐しなければならない場合の宿泊施設の確保
  • 業務復旧チームによる中断した業務プロセスの復旧期間の目標設定およびモニタ リングの状況
  • それぞれの業務プロセスの継続の為の戦略立案、複数の施設や地域が感染した場 合の戦略の統合または優先順位付け
  • サプライチェーンの依存性の明確化、中断された場合の代替チャネルの手配・確 保、バックアップが失敗した場合の対応策
  • 汚染された地域内または地域外での代替施設の有無、代替施設への交通手段の確 保


(Marsh Inc. 2006年1月発行 米国MarshInc.,Kroll,Mercer Management Consulting 共著 'Risk Alert Volume V,Issue 1 Junuary 2006/ Avian Flu:Preparing for a Pandemic'より抜粋・和訳/訳者 金光 龍路 マーシュ ジャパン株式会社)

(注 記)
1.RiskAlertは米国マーシュ社が作成しているリスクに関わる重要な情報を顧客・社員に伝えるためのニュースレターです。本レポートは原文を要約・和訳しました。
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