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マーシュ ジャパン /
マーシュ ブローカー
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海外投資セミナー
JOI機関紙「海外投融資」2005年7月号
◎アジアにおけるインフラ資産に対するリスク管理:課題および解決法
2005年6月7日、マーシュ ジャパン株式会社、マーシュ ブローカー ジャパン株式会社、海外投融資情報財団の共催によりセミナー「アジアにおけるインフラ資産に対するリスク管理:課題および解決法」が開催されました。以下では、セミナーのスピーチの概要を抜粋して掲載いたします。(文責:当財団)
■エネルギー・インフラの重要性とその防御について■
クロールセキュリティーインターナショナル
フィル・ローマックス
エネルギー関連プロジェクトは、テロ事件が起こる危険性の高い地域で頻繁に遂行されている。膨大な投資を伴うこの種のプロジェクトが、テロ・リスクに対してどのような対策を講じているかを検証する価値は非常に高いだろう。一般にテロ・リスクに対して講じられる防御策は、当該地域におけるテロの脅威レベル、設備の重要度と脆弱性を分析したうえで決定される。洗い出されたプロジェクトの脆弱性については、除去する、低減する、あるいは無視するという対処方法が考えられるが、費用対効果にもとづいて決定されることが多い。
発電プラントや電力配給設備などのエネルギー基幹設備は、世界各国至る所で重要な産業基幹設備として位置づけられている。その理由として、通信設備や交通機関などをはじめとしたその他産業基幹設備が電力供給に大きく依存していることがあげられる。
発電設備や電力供給設備は偶発的な事故や故障などによる機能障害が発生しやすいため、システムそのものに内在するぜう弱さについてはすでに広く知られている。事故例は数多くあげられるが、過去に最も甚大な被害を引き起こした事故についてみると、電力配給が不能に陥る原因が、発電装置ではなく、多くの場合トランスミッション部に生じた事故によるものであることは注目に値する。トランスミッションシステムに使用されている部品は故障しにくいとされるため、予備品の準備がない場合が多く、復旧には時間を要する例が多い。また、トランスミッションは野外に設置されている場合が多いことから、発電設備および電力供給設備のうち最も脆弱な部分であるといえよう。
テロリストはテロの標的(ターゲット)へのアクセスと逃走ルートの確保が容易か否かを基準に、標的および攻撃手順を決定する。ただし、昨今増加傾向にある自爆テロの場合、逃走ルートが不要であることは言うまでもない。テロリストはターゲットを選定する再、標的の象徴性、出入りする車両のスケジュール、防犯対策、来訪者の管理方法などについても入念な事前準備を行うのが一般的である。
ある調査によると、エネルギー・インフラに対するテロ攻撃のうち最も多いのは、パイプライン爆破攻撃である。とくに荒野に設置されるパイプラインは、前述のテロリストが標的を決定する際の基準に照らしても、その標的にされやすいことが理解できる。とはいえ、パイプラインに対するテロ攻撃は周辺環境に悪影響を及ぼすというリスクを内在しつつも、損害の程度は比較的短期間で復旧可能な軽度の供給中断にとどまり、巨大災害にまでは至らないことが多い。しかし、電力配給設備に対するテロ攻撃、とくに荒野に設置された高圧線鉄塔等に対する攻撃は、復旧作業により多くの時間とコストを費やす必要があり、損害拡大のリスクをも含んでいる。
当社では、エネルギー・インフラにかかわるプロジェクトに内在する脅威、リスク、脆弱性を特定し、その防御策の策定を行っている。クロールはセキュリティ対策を講じるうえで、主として次の3つの基本概念を採用している。
・犯罪抑止に効果的な環境設計(CPTED : Crime Prevention Through Environmental Design)
・統合化安全設計(ID : Integrated Design)
・防御に関する同心円的概念(CCP : Concentric Circles of Protection)
第一のCPTEDは建物外部からの侵入に対する脆弱性を抑止するために、遮へい物設置、地形の利用、照明器具設置等を重視した、旧来から行われている間接的な安全対策の概念である。
第二のID(図1の3つの円を参照)は、セキュリティ対策に必要な3要素(建物構造、運用、テクノロジー)を相互作用させて包括的で効果的な提言を行おうとするものである。
・建物構造上の側面:隣接建築物、境界線の防御、人員配置、システム管理、配送品や郵便物のプロセス管理等に関する対策
・テクノロジー:自動出入ゲート、施錠装置、警報装置、CCTV、火災報知器、館内通話装置等に関する対策
これらの3要素のうち1つだけを他の要素と切り離して考慮しても不十分な安全対策しか生まれない。たとえ、ある要素が完全なものではないとしても、他の要素との組み合わせによって互いに補完または相乗効果を追求することで、より強力な安全対策を構築しようとするものである。
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第三のCCPは、図2の同心円にあるように安全問題の解決を図る際に、安全上保護するべき対象を段階的にとらえるものである。すなわち、施錠外周からより内部へ進もうとするほど、セキュリティレベルを上げるべきであるという発想である。
図2には「侵入妨害ゾーン」という矢印が加えられている。各円の縁の部分は、内部へアクセスしようとする者が許可を受けているかどうかをチェックするべきポイントである。このポイントは不正侵入を発見し、より内部への侵入を阻止すべき砦(とりで)と見なされる。
■世界におけるインフラ整備、リスクマネジメントと保険■
マーシュ インク ジェイムズ・A・マグワイヤ
マーシュ ブローカー ジャパン 増本真一
アジアにおけるインフラ整備事業の盛況ぶりは、ビジネス・業界紙あるいはシンクタンクのレポート等で頻繁に報告されている。しかしながら資金調達方法やインフラ整備事業に関連する法令の整備が十分でないため、銀行、弁護士、技術者、建築業者やデベロッパー(そして保険アドバイザーでさえも)等の関係者は幾度もスケジュールを調整し、資金調達に奔走し、そして篁定評を作成する等の作業を繰り返さざるを得ない。
インフラ事業の資金調達方法やメカニズムは千差万別であり、代表的な例としてBOT方式、BOO方式、PPP方式等があげられる。いかなる資金調達構造やプロジェクトであれ、出資者、レンダー、コントラクターには下記のような留意点がある。
・コスト、ペナルティを最小限に抑制、計画通りに完了。
・債務や出資の増加なく予算内での完了。
・安全裡に完了。
・法令および規制遵守。
自国では上記の留意点は、プロジェクトの出資者、請負業者(またはレンダー)にとって了解事項であろう。しかし、海外プロジェクトでは異なる規制やリスクがあるケースも多く、商習慣の差異に戸惑うこともあるのではないだろうか。
言語や文化が基本的な相違点の代表的なものであるが、それ以外にも“壁”となるような要素も含まれている。たとえば、海外で活動する請負業者や企業にとって、“風評リスク”は現地での活動に支障を来たすような大きな損害をもたらしかねない。契約や下請契約の規則、健康と安全性に関する基準と規則、環境ガイドラインなどのプロジェクトに潜在する“リスク”は複雑であり、国によって異なる。いかなるインフラ事業においても当事者は複雑かつ多種多様な事業リスクにさらされる。施主、出資者またはSPC(特別目的会社)に代表されるSPV(特別目的機関)、レンダー、投資家、請負業者のみならず、サプライヤー、製造業者、コンサルタント、技術者、オフテイカー(引き取り手)、営業許可取得者、燃料および原材料供給業者、そして地域社会までもが当事者となり得る。
このような当事者たちを事業リスクから守るため、リスクマネジメントおよび保険の両面から、リスクの徹底管理が求められる。契約上のリスクを分散させることに加えて、“Owner Controlled Insurance Program(OCIP : 発注者主導による統合保険プログラム)”を導入することにより、主要な事業リスクをカバーできる。OCIPの特徴は下記のとおりである。
・所有者あるいは出資者による保険、再保険手配の適正な保険料管理。
・建設工事に伴うリスクから操業リスクがバーへの均一なカバー内容の保険設計。
・保険会社、再保険会社のセキュリティ管理の厳格化。
・プロジェクト・ファイナンスを導入している場合の開業遅延保険付保。
インフラ事業における資金融資の安全性に関して、保険は非常に重要な位置付けにある。事業資産損失あるいは損害に対する資金供給のみならず、借入金返済の基盤となるキャッシュフローを確保し、その結果として完成リスクを軽減し、かつ事業の信用性を補完する。プロジェクト・ファイナンスを採用する多くの場合、保険を重視しており、レンダーには保険契約に書きのような条件をつける。
・保険または再保険内容の指定(現地の法律、規制範囲内で)。
・レンダーに対する求償権放棄。
・国内外の保険金受取人ならびに指定口座の指定。
・保険会社の信用格付け(A-以上)の指定。
・ポリティカル・リスク、あるいは近年増加傾向にあるテロ・リスクへの保険付保。
海外進出している日本企業がアジアや中東における投資を検討する際、保険手配、クレーム処理、リスクマネジメントに関する実務的なプロセスの初期段階から検討を始める。保険手配の重要かつ基本的なポイントを下記にあげる。
・早い段階における保険コンサルタント導入、現地および再保険マーケット情報収集。
・保険関連の現地付保規制や法令、あるいは商慣習の理解。たとえば、中国における即収の原則や、アラブ首長国連邦における瑕疵賠償責任期間10年間等。
・リスクマネジメントと保険担当者から構成される”チーム”を組成。
・自社のリスクを反映する保険や約款とマニュアルの作成。
・保険引受のための総合的かつ正確な情報の提供。
多国籍企業にとってリスクマネジメント遂行のために重要とされるのは、いわば企業の“実務経歴書”のような下記の情報を整理・収集しておくことである。
・国内・海外プロジェクトの経験。
・国内・海外プロジェクトにおける請負金額、種類、無事故記録。
・専門分野と実績の明確化:トンネル建設、電力技術開発等。
・現地の防災基準あるいは規制に関する知識:スプリンクラー設置基準、耐震基準あるいは環境に関する規制。
・事業継続プランの構築:たとえば主要な機材の再注文、再製造、再設置、試運転にかかる期間と手数料の把握。
・リスクマトリックス、損失防止策、リスクマネジメントのガイドラインの作成:コンサルタントを含めた実地訓練の実施。
・安全ガイドラインの作成:風評リスクへの留意。
さらにプロジェクト遂行中に事故が発生した場合のクレーム管理は下記の手順に従って遂行すべきである。
・クレーム管理マニュアルと手順の事前策定。
・事故発生時に支出した経費の正確な記録化。
・事故発生時における情報集約担当者の任命。
・自社業務に精通した経験豊かな査定人の任命。
・保険会社、再保険会社のクレーム処理プロセスの把握。
世界各国の企業が投資家、請負業者、専門分野の下請業者、OEM、あるいはコンサルタントとして1つのプロジェクトに参入することにより、インフラ開発はますますグローバル化している。国際的な環境下で操業するために上述のような実務指針の作成は欠かせない作業である。その背景に、国際的進出を果たせば果たすほど事故は起こり得るものであり、また実際に頻繁に発生しているのは事実である。
本論のまとめとして、国際的なネットワークをもつ保険コンサルタントがインフラ事業関連企業に求める要件を下記にあげよう。
・プロジェクト進行の早い段階で“リスク”に取り組む。保険は最終段階で検討されることが多いが、財務的解決に向けてのプロジェクト文書の重要な側面であることを考慮されたい。
・自社のリスクマネジメント哲学を創造し、洗練させ、プロジェクト・メンバーに周知徹底させる。
・保険調達手順を自社にとって最適な方法で管理できるように、その手順を理解し掌握する。
・現地における“安全第一、品質第一”に留意したプロジェクトを推進する。
・単に保険を購入するだけではなく、リスクを管理する
■“Balanced Approach”手法を用いたテロリスクの評価と転嫁に関する意思決定
マーシュ シンガポール Pte Ltd. ジェイムズ・F・クワーク
マーシュ ジャパン株式会社 服部哲弥
テロ・リスクをカバーする保険を購入するか否かの意思決定に際し、“Balanced Approach”手法が用いられる事例はあまりみられないが、一方で、この手法によりコスト削減を実現した企業は少なくない。
保険に転嫁しない、あるいは実際のリスクよりも少ない保険金額で保険契約を結ぶ場合、企業はどのような手法で契約内容を検討したのか、意思決定の経緯を株主に対して説明する立場にある。とりわけ後者を怠るとD&O(Directors & Officers Liability:役員賠償責任)に発展する可能性もあり、コーポレートガバナンスの観点からも非常に重要である。
現在、多くの企業が契約している財物保険や利益保険は、テロ攻撃による被害損失と事業中断は通常、免責である。これらの免責条項に対して、企業は下記のような2つの反応をみせることが多い。
1.無反応な事例
財物保険や利益保険のテロ免責条項を気にとめることなく、テロ攻撃による損害や事業中断などが自社に起こらないことを願う。テロの標的にはならない、すなわち何も気にする必要がないという見解に至る事例
2.過剰に反応する事例
自社に起こり得る、考えられるだけのテロ攻撃による損失や事業中断の可能性に対して保険キャパシティを可能な限り確保はするものの、確保するだけで安心してしまう。保険さえ契約しておけばテロ・リスク対策があたかも万全に整ったと考えているようで、さらにそれが自社にとって唯一の方法であると極論づけている事例。
上記2つの事例では、感情的な決断にもどづく行動である点が共通項としてあげられる。事象に対して冷静かつ多角的に取組み、かつ自社に潜在するリスクそのものに対して処理策を講じたり、財物保険のテロによる損害が有責条項に変更されるまで、絶えず検討し続けることが望ましい。
“Balanced Approach”手法の主要な3段階におけるポイントは下記のとおりである。
1.リスク評価
・自社の業界特有のリスクと施設が位置する場所に起因するリスクを把握する。
・国内・海外メディア、現地スタッフ、現地の新聞などをはじめ、あらゆる手段を有効活用してテロに関する情報を収集し、蓄積しておく。
・社内で検討を重ねるだけでなく、保険会社、コンサルタントなどの外部専門家を活用する。
2.リスクの分析と把握
・単に資産価値を把握するだけではなく、たとえば他社がテロによる被害を受けた場合、自社にどのような影響を及ぼすかまでをも把握する。ビルの警備会社、国内および海外の保安システムのコンサルタントなどから、セキュリティに関する情報を収集する。
・社内に検討チームを設置し、責任の所在を目宇角しに、経営陣も含めて検討していく。
・社内に検討チームを設置し、責任の所在を明確にし、経営陣も含めて検討していく。
3.解決策(ソリューション)の実行
・保険の引受先を検討する。まず、現在付保している財務保険の引受保険会社にテロ・リスクをカバーする保険の購入が現実的かを確認し、もしこれが現実的でなければ、現地にテロ・リスク引受プールの有無を確認する。また、国営保険会社と民間保険会社の引受条件の比較も重要である。
・状況や環境の変化に応じて情報が更新されているかを確認するのはもちろんのこと、テロ・リスクに対応するための社内プロジェクトチームが活発に活動しているかを監視する。形骸化するようであっては意味をもたない。
多国籍ビジネスを展開する企業が直面する巨大リスクは避けて通れない問題ではあるものの、それによって得られる大きなリターンの期待感が投資意欲をかきたてる。世界のインフラ事業に参入する日本企業にとっても、資金調達のスキームの要求項目は、時として頭の痛い課題であろう。これまでに述べてきたあらゆる角度からのリスクへの取組みを実践し、プロジェクト特有のリスクを把握し、適切な処理策を講じることにより、巨大プロジェクトを成功に導き、ひいては企業価値工場につながっていくことを確信している。「リスクは運命ではなく、選択すべきものである」(Peter Bernstein)−−この格言を世界進出する企業に贈りたい。
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