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月刊シニアビジネスマーケット連載
「【高齢者の資産運用】シニア資産・保険マーケットへのアプローチ(7)」
民間保険各社による介護保険商品への取り組みと展望

マーシュ ジャパン株式会社
アフィニティチーム
アシスタント・バイス・プレジデント
柳沼 芳恵

公的介護保険の動向は?

 連載第7回の今回は、民間保険会社による介護保険商品の開発について概観する。

 日本における公的介護保険は2000年4月に導入され、平成14年度介護保険事業状況報告(厚生労働省)によると、約344.5万人が要介護・要支援認定を受けている。今後、日本は高齢者人口の増加に伴い、介護や支援を必要とする人が2025年には520万人に達するという厚生労働省の推計もあることからも、介護分野における保険等の潜在ニーズは高いと言われている。

 一方で、公的介護保険は制度改革が進められており、要支援や要介護1の認定区分の見直しや、家事援助をはじめとしたサービスの支給制限、あるいは予防サービスを重視した給付への移行などが俎上に上っている。

 
月刊シニアビジネスマーケット
2005年3月号 第8号
発行元 綜合ユニコム株式会社
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 現在の住宅サービスの支給限度額と主なサービス水準は、図表のとおりである。利用料の1割が自己負担であるため、毎月の出費額は決して高額ではない。今後いわゆる「ホテルコスト」が自己負担になると、介護施設に入所している場合、毎月の負担額が現在より約3万円程度増えるケースもあるものの、総じて手厚い給付内容と言えよう。

民間の介護保険商品への加入者は少ない

 (社)生命保険協会の統計データによると、平成15年度の介護保険保有件数は約145万件で、保有契約全体の約1.3%にしか満たず、平成15年度1年間の新規契約件数も約29万件である。これは、全分野の新規契約件数合計が約1036万件、また医療保険を例に挙げると約1390万件の新規契約件数があることに比較しても、大変少ないことが見て取れる。また、(社)日本損害保険協会の2002年度「損害保険に関する全国調査綜合報告書」によると、介護保険の加入率は全年齢で3.8%、年代別で見ると、40歳代で5.4%、50歳代で4.6%、60歳代以上では6.9%となっており、中高年層の加入率が高くなっていることが分かる。

介護保険商品の仕組み

 民間の介護保険商品の主な商品の仕組みは以下のとおりである。

【給付種類】
現金給付。給付のパターンは、「介護一時金」「介護年金」「介護一時金と介護年金の併用」の3通りがある。使途は自由。


【給付条件】
1.保険会社が定める所定の要介護状態になり、一定期間(180日が一般的)継続したと医師が診断した場合。公的介護の認定基準とは連動しないので、年齢による制限は緩和されている。

2.公的介護保険制度で定める要介護状態の認定を受けた場合で、保険会社により異なるが、概ね要介護2〜3以上の認定の場合。

【保障対象】
主に「寝たきり」と「認知症」を保障する対応と、「認知症」を保障するタイプの2通りの商品がある。

【その他保障】
死亡、高度障害、特定疾病状態になった際に、保険金や年金が支払われる混合型保険となっているものが多い。他に介護状態にならなかった場合の健康祝金や、リハビリ費用補償、介護費用の実費払い等がある。

 これらの保険は、一部の保険会社で提携機関を利用して提供する付帯サービスがあるものの、基本は全て現金給付である。そのため、払込保険料総額と給付総額を比較して有利であれば介護保険を購入するという選択となるが、その加入が伸び悩んでいる理由としては、給付の認定条件が厳しい一方で、毎月給付額が数万円程度に過ぎないといった点が主に指摘されている。介護保険は終身保障型が多く、長期にわたり介護状態となるケースでは保険加入のメリットは十分あるものの、訴求力に欠けているようだ。

若年層ほど“不安派”が多い

 (財)生命保険文化センターの「平成15年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、世帯主または配偶者が要介護状態となった場合の公的介護保険の範囲外費用で必要と考える資金総額は、平均675万円と算出されている。1000万円以上必要と回答した人は25.4%におよび、その理由は公的介護保険の1割の自己負担金額に加え、住宅改造や介護用品購入などの公的介護保険で賄えない初期出費を考慮したためのものと思われる。

 また、公的介護保険の範囲外の費用に対する現在の経済的備えについては、「非常に不安」「少し不安」を合わせた“不安派”が85.9%と圧倒的で、「非常に不安」が50.4%と半数を占めた。特に若年層ほど“不安派”が多く、公的介護保険の現行レベルでの給付継続性を疑問視しているからではないかと推察できる。

保険各社が介護分野へ参入する狙いは?

 今後、顧客層が高齢化することを見込んで、各保険会社はシルバー関連ビジネスに注力し始めている。その具体的な内容としては、提携または関連会社による訪問介護事業、老人ホームや福祉サービス事業者の第三者評価事業の運営、保険を販売する営業職員のホームヘルパー資格取得などが挙げられる。

 これらは、保険本業以外の事業を新たに収益源とする狙いとともに、将来見込まれる保険業法の改正により、現在の現金給付に加えて、現物(サービス)給付型保険商品の開発を視野に入れているためでもあろう。介護に潜在する消費者のニーズ動向は、介護保険の商品開発には欠かすことのできない要素である。この他にも、訪問介護と保険販売を同時に行えるようになれば、要介護者のいる世帯への保険販売が推進できるなど、将来の販売戦略に繋げる意図も含んでいるようだ。

黎明期にあるシニア向け保険アフィニティビジネス

 前回の連載第6回(05年2月号)で論じた医療保険、今回の介護保険などの分野は、いずれもシニア層に潜在的なニーズがあり、今後の保険商品開発次第では、大きなマーケットになり得る。マーシュ ジャパンでは、これまでの連載で紹介した米国の事例(04年9月号)や英国の事例(05年1月号)に見られるように、マーケットの特性に合わせた保険商品の開発やサービスの提供により、シニアマーケットにおける保険ビジネスを成功に導くことができると考えている。

 日本においては、シニアマーケットを一つのアフィニティ(※)としたビジネスは、旅行や介護用品関連で一部見受けられるものの、シニアに特化した保険商品を提供している組織はあまり見られず、黎明期と言ってもよいだろう。今後、日本のシニア層向けビジネスを展開するにあたり、シニア層のニーズに合致した保険ビジネスにどのように取り組み、その支持を得ていくかは、成功を左右する重要なポイントの一つになるだろう。

 第8回、第9回では、日本における企業退職者向けビジネスの取り組みについて、保険を中心に言及する。


(※)アフィニティ(Affinity) 直訳すると「類縁」「類似性」。マーシュ ジャパンでは「共通の利益・特徴を有する個人の集合体」と定義している。(05年1月号掲載の本連載第5回「英国SAGAにみるシニア層向けアフィニティビジネスの成功要因」より)


マーシュ ジャパン株式会社
リスクマネジメント及び保険関連サービスを提供するマーシュ・インクの日本法人。アフィニティチームでは、個人顧客基盤を有する企業を対象に保険プログラム並びに従業員向け福利厚生制度の構築・運営を担当し、保険のスペシャリストとしてのコンサルテーションノウハウと独自のCRMシステムを駆使したコールセンター業務運営方式を融合させたフルアウトソーシングモデルを提供する。


柳沼 芳恵(やぎぬま よしえ)
東京大学文学部社会心理学科卒。三井生命保険相互会社(現三井生命保険株式会社)で従業員向け福利厚生制度を扱う企業保険分野の企画・設計・営業に従事。2001年より現職。生命保険・損害保険・年金制度等の福利厚生制度のコンサルティングに従事。ファイナンシャルいプランナー。DCプランナー。


 
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