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月刊シニアビジネスマーケット連載
「【高齢者の資産運用】シニア資産・保険マーケットへのアプローチ(6)」
シニアの医療保障ニーズに注目
保険各社の医療保険商品開発は今

マーシュ ジャパン株式会社 アフィニティチーム
アシスタント・バイス・プレジデント 柳沼 芳恵

医療費の自己負担が増大する

 連載第6回、第7回は舞台を日本に移し、保険業界の商品開発について紹介する。

 日本の公的な医療保険制度における自己負担割合は平成15年4月より、3〜69歳までが一律3割、70歳以上が所得に応じて1〜2割にそれぞれ統一され、高度医療費による自己負担割合の払い戻しの月間限度額も所得に応じて上限が引き上げられた(図表1)。

月刊シニアビジネスマーケット
2005年2月号 第7号
発行元 綜合ユニコム株式会社
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 この他にも上乗せで自己負担100%を余儀なくされるものとして、1日780円の入院時食事代や1日5000〜1万円超が相場の差額ベッド代、公的医療保険対象外の高度先進医療の技術料などが挙げられる。これらにより、特に高所得層における医療費の自己負担割合は大幅に増加している。

 おおまかな試算では、高度医療費の一般区分に該当する70歳未満の人が1ヶ月入院した場合、診療の医療点数に応じた差額はあるものの、月額10万〜30万円程度の自己負担が発生すると言われる。多くの場合、さらに差額ベッド代の約10万円程度が加わると仮定すれば、高所得層に限らず自己負担金額は決して小さくない。平成15年度の生命保険に関する全国実態調査(生命保険文化センター実施)でも、入院時に必要な資金の月額は平均29.4万円、30万円以上必要とする人も44.9%という調査結果が出ている。

医療保険商品が伸びている

 一方で民間の医療保険契約が伸びている。生命保険協会がまとめた生命保険事業概要によると、平成15年4月〜16年3月の個人保険全体の新規契約件数は、約1036万件で対前年比93.8%と減少したが、特筆すべきは医療保険が約280万件(対前年124.9%)と飛躍的に伸びたことである。

 医療やガンの保障は、生命保険会社の保険商品では多くの場合、死亡保険や個人年金の特約の新規契約件数として販売されている。これらの疾病関係特約が平均5つあると過程しても、それを超えてさらに約340万件の特約による医療保障への新規加入があったことになる。

 時系列でみると、特約を含まない単独契約の医療保険とガン保険を合算した新規契約件数の対前年比伸び率は、平成5年は15%だったのに対して、平成10年22.5%、平成13年28.9%、平成14年31.6%、平成15年37.8%と好調な推移を示している。

 
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   では、50歳以上のシニア層の動向はどうだろうか。生命保険協会が調査した平成15年度の個人保険新規契約件数の内訳では、「その他保険(医療保険、ガン保険、子供保険等を含む)」は、50歳代で約76万件、60歳代で約60万件が加入している。シニア層が「その他保険」に新規に加入する割合は上昇傾向にある(図表2-1、図表2-2)。それまで死亡保障の特約で医療保障をカバーしていたシニア層が、医療保険を単独商品として選択するようになっている傾向も一因であろう。

シニアはお金はあれど加入できず?

  前出の全国実態調査結果によると、入院した際の経済的備えに対する安心感・不安感は、平成15年調査では、全年齢で「大丈夫」3.9%と「たぶん大丈夫」20.4%を合計した“安心派”が24.3%。一方、「少し不安」38.7%と「非常に不安」36.4%の“不安派”が75%となっている。

  このうちシニア層の”不安派”は、50歳代前半で80.3%、50歳代後半で76%、60歳代前半で70.1%、65歳以上で65.8%となっている。公的医療保険以外に自助手段が必要と認識している人が多いということが窺える。

  一方で、世帯年収が1000万円を超える高所得層では、全年齢で、”不安派”が61%と全体より低い。高所得層では、貯蓄の取り崩しで医療費を捻出できるためだと考えられる。

  シニア層の保険加入意向はどうだろうか。同調査での「保険加入・追加加入意向」の年齢別割合では、50歳代前半で保険加入・追加加入の意向が「ある」と答えた人が36.2%、50歳代後半で29.9%、60歳代前半で21.7%、65歳以上で14.8%と、”不安派”の割合に比して実は少ない。


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 この結果の背景を「保険への加入・追加加入意思のない理由」から考察すると、60歳代以上では「経済的余裕はあるものの、健康上の理由や年齢制限のために加入できない」という回答が目立つことが分かる(図表3)。

 厚生労働省の国民生活基礎調査でも、50歳代後半以上で、自分の健康状態があまり良好ではないと思う人は増加傾向にあり、シニア層の医療ニーズは顕在である。また、健康保険組合のある企業を退職したシニア層には、在職中に享受した医療費自己負担分の一部補助である「付加給付」を失うことに伴って、新たな自助努力ニーズが生まれていることも見逃せない。今後はさらにシニア層のニーズにマッチした医療保険の商品開発が重要になる。

医療保険の商品開発動向は今

 医療保険の商品開発は、従来、外資系保険会社が中心的な役割を果たしてきた。これは、国内生命保険会社は、営業戦略上、死亡保険を重視する傾向が強かったことや、特約以外の医療保険販売が認められたのが2001年からと日が浅いことが影響している。最近では、医療保険単独商品へのニーズの高さもあり、国内・外資系を問わず、様々なタイプの保険商品が開発されている。

 一方、保険会社にとって、医療保険は給付金等の支払いリスクが読みにくい商品のひとつである。事実、医療技術の進歩により、昭和50年代に開発された手術給付金特約は現在一部で収支が悪化していることをはじめ、近年のガン診断の進歩によりガンにかかわる診断給付金支払い等も大幅に増加している。そのため一般に認知されていないが、医療保険約款では多くの場合、保険料基礎率変更条項が設定され、将来の統計上の支払いリスク次第では保険会社による保険料の見直しが可能となっている。

 最近の医療保険商品開発の主な流れは、次のように分類できる。

1.給付金支払い種類の拡大・・・生活習慣病、特定疾病、移植手術での支払い、実損補填等

2.保障期間の拡大・・・終身保障、日帰り入院からの保障、1回の入院での支払い期間の拡大等

3.保険加入可能条件の緩和・・・新規加入年齢の引上げ、健康診断の緩和、無選択保険等

4.保険料の引き下げ・・・保障内容のシンプル化、健康優良体割引、解約返戻金廃止、保険料の市場金利運動等

5.一括での給付金受け取りの拡大・・・診断一時金、健康祝い金等

6.付加サービスの拡大・・・・健康相談、介護支援サービス、レジャー等各種割引サービス等

 現在の医療保険商品は、入院時の自己負担の経済的なサポートに主眼が置かれる傾向にある。これは商品開発において、いかに安く加入し、多くの給付が入院時に受けられるかに着目したものであり、医療保険の新規契約増という形で一定の成果を得ていると言えよう。また、年齢や健康状態による加入条件の緩和が進んだことも、シニア層の加入者増に繋がっている。

高所得シニアにヒットした医療保険商品

 シニア層向け商品開発の最近のトピックスとしては、医療保障の自助努力ニーズをあまり感じていない高所得者向けの医療保険が挙げられよう。高所得シニア層のニーズに沿った商品は次のようなものがある。

 一つは保険料一括払いで加入できる終身医療保険の発売である。主に企業を退職するシニア層向けに、保険料を一括で支払うことにより、保険料総額を安く設定するメリットを武器として打ち出し、預金と比較して選択してもらおうという商品である。掛け捨てではなく解約返戻金があることから、一括保険料と解約返戻金の差額分で医療保険を購入する割引債のようなイメージの商品として、高所得シニア層の支持を得ている。今まで預金で医療ニーズをまかなおうとしていた層にアピールした例である。

 もう一つは、医療保険に加入することによるプラスアルファの価値提供をセールスポイントとする動きである。注目される商品として、自由診療でも、公的保険診療でも、実質自己負担を不要とする包括的なサポートを可能にした保険が発売されている。契約者のアドバンテージとして、自己負担金全額を金額にかかわらず保険でまかなえる上に、医療技術の高い提携医療機関や専門医、セカンドオピニオンの紹介といった、付加価値のあるサービスを受けられる点が評価されている。自由診療は、事前に第三者機関による診療の有効性の確認が必要とされるものの、契約者は診療の選択肢が広がって、安心感を得ることができると言えよう。

 類似の付加価値サービスは、各社ともに既に有料・無料の違いはあれど導入している。対象範囲は健康相談や介護支援といった保険と関連のあるものから、旅行やショッピング、カルチャーの割引等、多岐にわたる。ただ、いずれも個々の加入者のためのテイラーメードではなく、既存サービスを有利に斡旋する形式であるためか、保険加入の大きな選択要因とまではなっていない。

 もし今後、保険業法の法定他業の範囲は広がれば、保険会社は提携から一歩進んで自らが医療関係分野で独自サービスを提供することができるようになる可能性もあり、そうなれば付加サービスの価値を各社が独自に高めていくことができるようになる。シニア層向けの新たな医療保険商品開発に向けて、規制緩和に期待が寄せられている。

 次回は保険各社における介護保険商品の開発と販売の戦略について検討する。


マーシュ ジャパン株式会社
リスクマネジメント及び保険関連サービスを提供するマーシュ・インクの日本法人。アフィニティチームでは、個人顧客基盤を有する企業を対象に保険プログラム並びに従業員向け福利厚生制度の構築・運営を担当し、保険のスペシャリストとしてのコンサルテーションノウハウと独自CRMシステムを駆使したコールセンター業務運営方式を融合させたフルアウトソーシングモデルを提供する。


柳沼 芳恵
東京大学文学部社会心理学科卒。三井生命保険相互会社(現三井生命保険株式会社)で従業員向け福利厚生制度を扱う企業保険分野の企画・設計・営業に従事。2001年よりマーシュ ジャパン株式会社にて現職。生命保険・損害保険・年金制度のコンサルティングに従事する。ファイナンシャルプランナー。DCプランナー。



 
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